「小さな傷でも私に見せてよ」の深み

国民的シンガーソングライターのあいみょんの『猫にジェラシー』というアルバムに入ってる『私に見せてよ』という曲の時間的深みがすごい。

歌詞をざっくりまとめると「隠し事せずあなたの全部を教えてね」という曲。

隠し事しないでね、全部教えてね、ってただそれだけならいいのだがあいみょんのすごいところは「小さな傷でも見せてね」とこのワンフレーズに時間的拘束も含んでいるところだ。

小さな傷、たとえば擦り傷は大抵の人間であれば数日のうちに治ってしまう。

この数日の間に、傷が治るまでに見せてね、とこのワンフレーズは言ってるのだ。

そのあとにでてくる

「こうして話せないことが増えたのは 離れる隙がないからか?」

これもすごい。

話せないことが増えたのは離れる隙がない=常に一緒にいて考えも何も全て知られているから話すことがない、ということだと私は解釈している。

会話は相手が知らないこと、たとえば自分の考え、感情、近況などを伝える時、また相手と何か共感したい時などに生まれる。

逆に相手がすでに知っていることについてわざわざ話すことはほぼない。

そう、あいみょんに全てを知られているのだ。

だからもう話すことなどないのだ。

「どうして知らないことが増えるのかな 全てを見せた後に」という歌詞が語るのは、知らないこと、隠し事があるのも知ってるぞ、ということである。隠し事することさえ無駄だと言わんばかりの”詰め”である。

こんな激重歌詞でありながらあいみょんの爽やかな歌声に載せられるとなぜか可愛い彼女の可愛い束縛に聞こえるから不思議である。

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